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緊急事態!!色々なことを書き散らしているようで、そうではなかったり。不思議でワイセツで知的な刺激を。
by fastska
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著者説明:(けっこう)有名な企業で仕事やっているけれど、片手間でライターもやっている。ファッションと旅行以外ならだいたい書ける。お仕事、感想、批判、誹謗中傷やらなんやらがあれば、ここまで。

earthcream2000@
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(山塚あて)
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サイバースペース夜話~第ニ話 死んだあの人からのハッピーバースデー
サイバースペース夜話~第ニ話 死んだあの人からのハッピーバースデー_a0022864_11255369.gif 「ねぇ、ねぇ、いまからどうする?」
 大阪の梅田駅の地下街、シャープの大型液晶の下に座り込んで、サークルのみんなと飲んだ後、終電をのがして肩を寄せて座り込んでいた彼女は彼につぶやいた。
 「ねぇ、ねぇ、だからどーすんの?カラオケでも行く?マンガ喫茶はいやだしなぁ・・・」
 ねぇ、わたしたちこんなことばかりやって本当にいいのかなぁ。もう最近、いつが朝なのか、今日が何曜日なのかさえわかんなくなっちゃったよ。

 みんなと違う方向に歩く二人、そして彼の家に行って、「めざましテレビ」を見ながら眠りだすなんていいのかなぁ、なんて言って笑いあっていた。ねぇ、ねぇ、私たち何もないね。これが大学生ってやつなのかしら、いつまでもこの時間が続けばいいね。

 「どうだろうね」
 「どうかな」
 「わかんないよ」
 「何が?」
 「来年どうなるかってこと」
 「どうって?」
 「いや、就職するから」
 「就職したら、こういうことできないの?」
 「できるさ」
 「ふーん」

 
 3年後彼は死んだ。

 
 自殺だった。

 就職してストレス?それともどこかに借金があった?なんていうことをいう人もいた。彼女との関係は続いていた。遺書はなかった。携帯電話がつながらないなーと心配していた1週間後、彼の携帯電話の着信履歴を見た彼の弟が彼女に電話して教えてくれた。

 「・・・・」

 わーーん、と初めて泣いた。正確には、その話を聞いて2分後に突然泣き始めた。うそ?これって冗談じゃないの?よくあのひとって手の込んだうそで私をいつもビックリさせたんじゃない。本当に?うそ?うそ?
 でも、彼のうそはいつも3分後にはうそだってわかった。私を長く悲しくさせず、すぐに笑いながら「うそだよ」って言ってくれた。それでも、今回は、長いうそじゃないの?

 彼女は3日間泣き続けた。

 

 半年が経った。周りの友達も、そろそろ「新しい彼氏は?」なんてことを言ってくれるんだけど、常に「うん、まだいいかな」と答えるようにしてる。まだまだ、なんていいながらずっとずっと彼のことを気にしている自分に気づいていて、それでまた泣きたくなる。クリスマスも過ぎ、新年、ああ色々あの人と行ってたなーーなんて思い出しながら、今では少し笑顔が出る。

 楽しかった思い出、映画で死んだ人のことを語るときってこんな心境なのかしら、と。

 そして誕生日。彼女は少し会社を早く出て、映画を観に行った。
 「とびっきり悲しいやつがいいな、だけど最後はハッピーエンドのやつ」
 彼女は呟いて、劇場に入った。映画が始まる。カップルばかりだったので、少しいやだったけど、どうせ一人ぼっちなんだから、とポップコーンにコーヒー。

 映画が始まって30分後、携帯にメールが着信した。あらやだ、なんて思いながら、とりあえず周りに迷惑じゃないようにメッセージを確認する。

 彼からだった。

 「誕生日おめでとう」


 「えっ」彼女は小さな声を出してしまった。えっえっえっ、と彼女はびっくりして、震えだした。えっえっえっえっえっえっと振るえて、どうしてよいかわからなくて、涙が急に出てきて目をぎゅっと強く閉じてしまった。

 彼女はポップコーンもそのままにして走って劇場から出てしまった。そして、映画館のベンチでその震えていた手の中にある携帯電話をもう一度見直した。

 やはり彼からだった。誕生日の特別メールだった。彼が確かに言っていた。「誕生日おめでとう」

 彼女はまだ泣き止めなかった。「誕生日おめでとう」。ありがとう、ありがとう、と何回も呟いた。何が起こったのか、よくわからなかったけれど、ありがとう、ありがとう、と何回も呟いた。ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう。

 あとでわかったのだけれど、彼は「送信日の設定」で死ぬ前に彼女の誕生日に向けて、メールを発信していたらしい。彼女は、死んだはずの人からメールがきたことをすごくすごく不思議なのだけれど、また彼のことを思い出して、嬉しくて悲しくてわけがわかんない感情にとらわれた。

 彼が死んでから、サーバーに閉じ込められて、私にメールするまで。彼はどこにいたの?もしかしたらずっとそこにいるんじゃないかな。彼女は「やっぱりあの人が死んだなんて、あの人の冗談じゃないかしら」と呟いてみた。きっと、どこかにいるんだ。

 そして彼女は来年も彼氏なんてつくらず、彼のメールを待つことに決めた。その最高に嬉しい誕生日のために。もちろん、上記のサイトでは1年以上先は送れない。だけど、だけど、なにかが送られてくる気がして。

 彼女は彼の死んだことに対して、待ちつづける自分の気持ちをブログに書いた。


 「悲しい

 本当に悲しい

 彼がいなくなって私はずっとずっと泣いていた

 364日が死にたいくらい悲しいものならば

 1日くらい楽しく待ち遠しい日があってもなにがいけないでしょうか」
by fastska | 2005-01-05 11:30 | サイバースペース
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